子どもが生まれて満一歳までに取得できる「育児休業(育休)」。

その取得の仕方には、様々な夫婦のカタチが表れる。妻だけが休んで育児の中心を擔う場合もあれば、夫も數日?數週間、時に半年?1年の長期間育休を取得するケースもある。夫婦の個々の事情や考え方が反映される部分だ。

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そんなさまざまある育児休業の中で、「バトンタッチ育休」を取った夫婦がいる。早めに職場復帰したいという妻の思い、そして夫の職場環境や「もう少し子どもと一緒にいたい」という思いから、夫婦でこのスタイルを選んだという。

一方の親からもう一方の親へとバトンを渡して順番に育児休業を取得する「バトンタッチ育休」。育休期間中は、それぞれが育児の中心を擔うことになる。そんなバトンタッチ育休を選んだことで、子育てへの考え方やパートナーシップのあり方はどのように変化したのか、2人に話を聞いた。

妻から夫に育休のバトンを渡す

今年9月、Twitter上で「バトンタッチ育休」の実體験を描いた漫畫が話題となった。作者は、2020年6月生まれで現在1歳5カ月の息子を育てる女性、子持ちしらご(@mtana_s)さん。

妻である子持ちしらごさんが9カ月の育休を取得した後、バトンタッチして夫、パパしらごさんが1年間の“育休”を取ることに決めた。すでにバトンは夫に渡り、8カ月目に入った。

出産當初からバトンタッチ育休を計畫してきたわけではなかったようで、「最初は出産翌年の4月に、0歳の段階で保育園に入れて共働きでいこう、という予定だった」と子持ちしらごさんは語る。

バトンタッチを提案したのはパパしらごさんからだった。

子持ちしらご(@mtana_s)さんのTwitterより

「子どもが2カ月くらいの時に、僕の仕事の都合もあって長い期間一緒に過ごすことができました。そばで成長を見ていると、どんどん可愛さが増して、『0歳で保育園に入れるのは寂しい、もっとそばで子どもを見ていたい』という思いが強くなった」(パパしらごさん)

パパしらごさんは妻が「早く仕事に復帰したい」という、固い意志を持っていたことを知っていたため、「僕が育休をとってみようかな」と口にする。そんな夫に、半信半疑になりながらもノリで「いいんじゃない?」と子持ちしらごさんは返事をしたという。

その後、「育休取ってみたいな」と心境が変化していったと、夫は振り返る。提案したのは夏の終わり。最初は迷いもあったが互いの両親や職場、周囲の友人?知人に相談するうちに、徐々に気持ちは固まり、10月には正式に育休取得の手続きに入った。

男性育休への周囲の反応

男性の育休取得に関しては、ここ數年様々な動きが起こっている。今年6月には男性の育休取得を後押しするため、育児?介護休業法が改正され、來年4月から段階的に施行される。

厚生労働省の発表によると、2020年度(令和2年度)の男性育休の取得率は12.65%。女性の81.6%とは大きな差がある。5年前、2015年度(平成27年度)の2.65%という數字から考えると、確かに変化が見られるとはいえ、まだまだ數字は低い。

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パパしらごさんも、最初に職場の上司に相談した際は「引き止められるわけではなかったですが、休まなくても時短とか別の働き方で育児に関わる方法もあるよ、と提案を受けました」と語る。

夫婦はともに20代後半だが、職場では年代によって、男性の育休取得に関する考え方の違いに觸れたという。上司からの反対意見にも夫は、「そういう意見もあると思うので、『參考になります』と返事しました」と話した。

夫婦それぞれの両親に話した際も、反対はされなかったが、心配はされたと語る。

「私たちの親も、男性は外で働いて、女性が家を守るという考え方が強くありました。だから最初は『いいんじゃない?』という反応でしたが、やはり『本當に大丈夫なの?』と心配されることもありました」と、子持ちしらごさん。

その橫で「うちの両親も、そうでしたね」と、夫も頷く。しかし夫婦の本気が伝わったのか、それ以上何かを言われることはなかったようだ。

バトンタッチして変わった夫の意識

妻の育休期間中から、週末は夫がワンオペで育児する機會があったため、バトンタッチは案外スムーズだったという。

「息子の好きな遊びや、食べられるメニューなどは夫ももともと把握していて、特に引継ぎしなくても大丈夫でした。バトンタッチの1?2カ月前から具體的に伝えたのは支援センターの場所や遊び方。私がよく會っていた同じ月齢の子どもがいるママ友も紹介しました」(子持ちしらごさん)

引継ぎした4月當初は、離乳食の作り置きを夫婦で週末に行っていたというが、それも徐々に夫の擔當に移行した。

「最初は自信がなかったので一緒に、という感じでしたが、妻が働きながら作り置きも擔當するのは大変で。離乳食の時期は子どもが食べられるメニューもどんどん変わっていくので、妻から教えてもらったことをベースに自分で調べたりしながらレパートリーを増やしていきました」(パパしらごさん)

子持ちしらご(@mtana_s)さんのTwitterより

妻の方も子育てに不安を抱きながら、日々試行錯誤して、分からなかったら調べて學んでいる。それを知った夫の方も、分からないことがあれば調べるなどといった當事者意識が芽生えたという。

現在は、子持ちしらごさんが夕飯後の洗い物と、平日帰宅後の子どものお風呂、そして可能な限り週末の夕食作りを擔當するという。それ以外の家事?育児はすべて夫の擔當だ。「もちろんロボット掃除機と乾燥機付き洗濯機には本當に頼っています。それがないと、毎日が立ち行かないと思いますね」(パパしらごさん)。

夫婦それぞれが「ワンオペ育児」を経験

子持ちしらごさんの漫畫で印象的だったシーンがある。バトンタッチして仕事に復帰した妻が、帰宅後、夫に「今日何してた?」という問いかける場面だ。

幼い子どもの育児はとにかく忙しい。排泄や食事、睡眠などあらゆることに親の介助が必要で、四六時中、目が離せない。これら最低限必要なタスクをこなすだけでも大変ななか、子育て支援センターに連れていったり、絵本を何冊も読んであげたり、具體的な「プラス」の行動を加えるのは容易ではないだろう。

子持ちしらご(@mtana_s)さんのTwitterより

「今日は子育て支援センターなどいろんなところに連れて行けたな、いろんな人と関われたな、いろんな體験をさせてあげられたな、っていう日はいいんですけど、何もできなかった、という日もしょっちゅうあって。そういう日に『何してた?』って聞かれると『すみません…!』っていう気持ちだったんですね。でも今、逆の立場になってみて何も悪気なく、なんとなく聞いちゃうから、去年の夫も、ぜんぜん悪意はなかったのかなって。正直に、『今日は何もできてないよ』って言えばよかったのかなって思います」(子持ちしらごさん)

その橫で、パパしらごさんも「當時は何も悪気なく言っていたけど、今はその気持ちがわかる」と頷く。「だからこそ、夫から『今日は何もできなかったよ』と言われても、『そうなんだ。やっぱり大変だよね』っていう気持ちになります」と子持ちしらごさん。

「仕事を中心にしながら育児をすることと、ワンオペ育児に専念することは『疲れ方』の種類が違うと思います。自分としては仕事のほうが肉體的には疲れるなと思いますが、職場を離れたら終わりで、メリハリがある。一方、ワンオペ育児って終わりがないし、寢ても覚めてもそこにある。精神的な疲れがどんどん蓄積される感じがあって。だから同じものさしで測っちゃいけないなって思います」(パパしらごさん)

その言葉に「そうそう!」頷く、子持ちしらごさん。日常的な気持ちを共有できること、これがバトンタッチ育休のメリットだ。

バトンタッチ育休はメリットが多い

バトンタッチ育休を取ったことについては「メリットが多い」と夫婦は口を揃える。

デメリットを挙げるとすれば、まだ社會の制度が追いついていないため、事務的な手続きが煩雑なこと。また、「パパ?ママ育休プラス(両親ともに育児休業を利用すると、子どもが1歳2カ月になるまで育休を延長できる)」制度を利用しているが、育児休業手當は子どもが1歳2カ月になるまでしか出ないため、殘りの期間は妻の収入のみになる、という経済的な面もあるという。

(※保育所等における保育の実施が行われないなどの理由により、子どもが1歳6カ月に達する日後の期間に育児休暇を取得する場合は、2歳に達する日前まで育児休業給付金の支給対象期間が延長できる)

子持ちしらご(@mtana_s)さんのTwitterより

子持ちしらごさんは、バトンタッチで育休を取得して、夫婦の間に現れた変化についてこう語る。

「夫婦の関係や、家族のカタチとしては良いことばかり。雙方が當事者として育児に関われるし、育児に専念する気持ちも、仕事を中心に行う気持ちもそれぞれお互いに理解できる。本當に、夫は去年と比べるとすごく頼りになって、逆に今は私がもうちょっと育児をがんばらなきゃいけないところもあるんですけど…今は夫婦でうまくやっていけている感じがありますね」

もちろん、日常はスムーズなことばかりではない。仕事の忙しさも家事の大変さも、その日の子どもの機嫌もすべてに波があり、時に意見の相異や感情の行き違いで衝突することもあると語る。

しかし、夫婦はモヤモヤを溜め込まず、相手に伝えて話し合う機會を大切にしているという。ネガティブな場面にあっても、相手の意見を知りたい、理解したいと思えることも、バトンタッチ育休を取ったからこそかもしれない。

取材?文=高木さおり(sand)